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1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.
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ミニブラックホールとLHC
STEINS;GATE3話にて、ミニブラックホール生成の話が出てきたので、
SF妄想の助けとして、この話の背景についてちょっと書いてみることにする。
SF妄想の助けとして、この話の背景についてちょっと書いてみることにする。
10+1次元の世界(1):相対性理論
このブログのタイトル、「10+1次元の世界」というのは、
20世紀物理学の二大支柱である相対性理論と量子力学を統一する理論として
提唱された超ひも理論、およびその超ひも理論の"完全な"定義を与えるとされる
M理論が定義される次元の数から来ている。
(超ひも理論は9+1次元、M理論は10+1次元、+1は時間方向を表す)
というわけで、これから何回かに分けてこのM理論をレビューしようと思う。
なぜアニメブログで物理?と思われるかもしれないが、そもそもこのブログを
始めた動機として、物理を分かりやすく説明するために文章を書く能力を磨きたい、
じゃあまず自分の好きなアニメについて何か書くところから始めよう、
というものがあるので、当初の理念には反していない。
そして、超ひも理論はCLANNADにも出てくるんだしいいじゃないかと。
今回は、前段階として、まずアインシュタインの(一般)相対性理論を
見てみることにする。相対性理論というのは、一言で言うと、
「我々の住む空間が時間とともにどう変化するのか?」
を扱う理論である。分かりやすさのために、(歴史的な)正確性を放棄するので、
専門家の方々は、そのへんは生暖かい目でスルーしていただけるとありがたい。
相対性理論を考える前に、19世紀以前の物理について少しおさらいしておく。
19世紀以前の物理、正確には現在「古典力学」と呼ばれているものは、
「固定された空間の中の、物質の運動を記述する」
学問であった。基本的な方程式は、ニュートン方程式ma=Fで与えられ、
ある時間での物質の位置と速度を決めると、別の時間での物質の位置と速度が
この式を使って完全に決定される。もう一度書くが、空間は固定されたもので、
例えば物質の運動によって空間の"形"が変わる、などということはなく、
中で何が起ころうが、その物質が住んでいる空間は不変であるとされた。
アインシュタインが相対性理論で主張したのは、
「これまで、人々は固定された空間の中の物質の運動を考えてきたけれども、
空間の"形"が時間とともに変化していってもいいじゃないか!」
ということ。例えば、古典力学と同じく19世紀以前の物理の一大分野である
「電磁気学」では電場や磁場が時間とともに変化することができるが、
これらも形と同じく空間の性質の一種である。アインシュタインは、
電場や磁場と同じように、物質が運動する空間の"形"が時間とともに
変わってもいいんじゃないか、と考えたのである。空間の形が変わる、
というのは想像しにくいかもしれないが、例えば我々が住む3次元空間の中の
2次元平面を考えると、その形はぐにゃぐにゃと曲げることができると思う。
3次元空間が曲がってる、というのは4次元の空間(というのも想像しにくいが)
を考えて、その中の3次元平面がぐにゃぐにゃ曲がってる、と思えばよい。
空間の形が変化する、と言っても、じゃあどういう法則に従って変化するのか、
というのを考えるのはまた難しい問題である。そこでアインシュタインは、
「光の速度は、観測者の運動に関係無く一定である」
「空間の時間変化を表す式は、観測者の運動に関係無く一定である」
という二つの仮定を置くことにした。一つ目の仮定は、直感的に考えると、
光と同じ方向に速く運動していれば、光が遅く見えるような気がするので、
何か突拍子も無いことを言っているように聞こえるかもしれないが、
これは当時よく知られていて実験事実で、多くの人がこのにわかには信じがたい
結果を何とかして説明しようと頑張っていた。(※)
二つ目の仮定に関しても、例えば古典力学において、観測者が止まっていようが
動いていようが、物質の運動はとにかくma=Fで表される、ということは
大昔から知られていて、それを空間にも適用しただけで、特別に怪しげなことを
やっているわけでは無い。
ともかく、アインシュタインはこれらを、空間が時間と共にどう変化していくのか、
を表す式を導くのに応用したのである。そして驚くべきことに、これらの仮定から、
超高エネルギー状態を考えない限り、式が一意に決まることを見つけた。(※※)
それがいわゆる「アインシュタイン方程式」(※※※)で、大雑把には、
(時空(※※※※)がどれくらい「曲がっている」か)=(空間内の物質の密度)
という形になる。
この式を信じると、密度の非常に大きい物質があると時空が曲がることが分かる。
そうすると、例えば曲がった時空内を運動する粒子の軌道や光の軌道も曲がり、
前者がよく知られている重力の性質(重さを持った物質は互いに引きつけあう)
を説明し、後者が既存の理論では説明できない、相対性理論特有の予言を与える。
この、光が密度の大きい物質(例えば地球や太陽)の近くで曲がる、という性質は、
エディントンによって観測され、実際に太陽の近くで、相対性理論の予言に従い、
光が僅かに曲がってることが確認された。
これにより、相対性理論が多分正しいんだろう、ということが示されたのである。
現在では、相対性理論は、学問的には宇宙の膨張や星の形成を議論するのに
使われており、日常生活においては、例えばGPSの基礎理論に使われている。
M理論を理解する上で重要な点をまとめると、
1. 相対性理論は、空間の性質がどう時間と共に変化を与える理論である。
2. 重力は、時空のゆがみによって記述される。
3. 相対性理論は、超高エネルギー領域にいかない限りは正しい。
ということである。この3.がくせもので、我々が住んでいる宇宙のような
低エネルギー領域を考える分には相対性理論は正しいのだけれども、
例えば宇宙はエネルギーがめちゃくちゃ高い状態から始まったことが知られていて、
宇宙初期の物理を議論しようとすると、相対性理論では議論できないことになる。
そこで超ひも理論が必要になるわけなのだが、今日はこのへんで。
(※)これを既存の理論で説明しようとしたんじゃなくて、
原理に据えて新しい理論を生みだしたのが、アインシュタインの頭の柔らかさを
如実に表しているように思う。
(※※)超高エネルギー云々という話は、本当は後に物理学の発展によって
分かったこと。アインシュタインが発見したのは、時間微分の二階までしか
含まない式は(宇宙定数の自由度を除いて)これしかない、ということである。
(※※※)実は、この式を最初に見つけたのは数学者のヒルベルトである。
(※※※※)時空=時間と空間を合わせたもの。光速度を不変に保つ条件から、
空間と時間をある程度同じように扱わなければならないことが数学的に分かる。
20世紀物理学の二大支柱である相対性理論と量子力学を統一する理論として
提唱された超ひも理論、およびその超ひも理論の"完全な"定義を与えるとされる
M理論が定義される次元の数から来ている。
(超ひも理論は9+1次元、M理論は10+1次元、+1は時間方向を表す)
というわけで、これから何回かに分けてこのM理論をレビューしようと思う。
なぜアニメブログで物理?と思われるかもしれないが、そもそもこのブログを
始めた動機として、物理を分かりやすく説明するために文章を書く能力を磨きたい、
じゃあまず自分の好きなアニメについて何か書くところから始めよう、
というものがあるので、当初の理念には反していない。
そして、超ひも理論はCLANNADにも出てくるんだしいいじゃないかと。
今回は、前段階として、まずアインシュタインの(一般)相対性理論を
見てみることにする。相対性理論というのは、一言で言うと、
「我々の住む空間が時間とともにどう変化するのか?」
を扱う理論である。分かりやすさのために、(歴史的な)正確性を放棄するので、
専門家の方々は、そのへんは生暖かい目でスルーしていただけるとありがたい。
相対性理論を考える前に、19世紀以前の物理について少しおさらいしておく。
19世紀以前の物理、正確には現在「古典力学」と呼ばれているものは、
「固定された空間の中の、物質の運動を記述する」
学問であった。基本的な方程式は、ニュートン方程式ma=Fで与えられ、
ある時間での物質の位置と速度を決めると、別の時間での物質の位置と速度が
この式を使って完全に決定される。もう一度書くが、空間は固定されたもので、
例えば物質の運動によって空間の"形"が変わる、などということはなく、
中で何が起ころうが、その物質が住んでいる空間は不変であるとされた。
アインシュタインが相対性理論で主張したのは、
「これまで、人々は固定された空間の中の物質の運動を考えてきたけれども、
空間の"形"が時間とともに変化していってもいいじゃないか!」
ということ。例えば、古典力学と同じく19世紀以前の物理の一大分野である
「電磁気学」では電場や磁場が時間とともに変化することができるが、
これらも形と同じく空間の性質の一種である。アインシュタインは、
電場や磁場と同じように、物質が運動する空間の"形"が時間とともに
変わってもいいんじゃないか、と考えたのである。空間の形が変わる、
というのは想像しにくいかもしれないが、例えば我々が住む3次元空間の中の
2次元平面を考えると、その形はぐにゃぐにゃと曲げることができると思う。
3次元空間が曲がってる、というのは4次元の空間(というのも想像しにくいが)
を考えて、その中の3次元平面がぐにゃぐにゃ曲がってる、と思えばよい。
空間の形が変化する、と言っても、じゃあどういう法則に従って変化するのか、
というのを考えるのはまた難しい問題である。そこでアインシュタインは、
「光の速度は、観測者の運動に関係無く一定である」
「空間の時間変化を表す式は、観測者の運動に関係無く一定である」
という二つの仮定を置くことにした。一つ目の仮定は、直感的に考えると、
光と同じ方向に速く運動していれば、光が遅く見えるような気がするので、
何か突拍子も無いことを言っているように聞こえるかもしれないが、
これは当時よく知られていて実験事実で、多くの人がこのにわかには信じがたい
結果を何とかして説明しようと頑張っていた。(※)
二つ目の仮定に関しても、例えば古典力学において、観測者が止まっていようが
動いていようが、物質の運動はとにかくma=Fで表される、ということは
大昔から知られていて、それを空間にも適用しただけで、特別に怪しげなことを
やっているわけでは無い。
ともかく、アインシュタインはこれらを、空間が時間と共にどう変化していくのか、
を表す式を導くのに応用したのである。そして驚くべきことに、これらの仮定から、
超高エネルギー状態を考えない限り、式が一意に決まることを見つけた。(※※)
それがいわゆる「アインシュタイン方程式」(※※※)で、大雑把には、
(時空(※※※※)がどれくらい「曲がっている」か)=(空間内の物質の密度)
という形になる。
この式を信じると、密度の非常に大きい物質があると時空が曲がることが分かる。
そうすると、例えば曲がった時空内を運動する粒子の軌道や光の軌道も曲がり、
前者がよく知られている重力の性質(重さを持った物質は互いに引きつけあう)
を説明し、後者が既存の理論では説明できない、相対性理論特有の予言を与える。
この、光が密度の大きい物質(例えば地球や太陽)の近くで曲がる、という性質は、
エディントンによって観測され、実際に太陽の近くで、相対性理論の予言に従い、
光が僅かに曲がってることが確認された。
これにより、相対性理論が多分正しいんだろう、ということが示されたのである。
現在では、相対性理論は、学問的には宇宙の膨張や星の形成を議論するのに
使われており、日常生活においては、例えばGPSの基礎理論に使われている。
M理論を理解する上で重要な点をまとめると、
1. 相対性理論は、空間の性質がどう時間と共に変化を与える理論である。
2. 重力は、時空のゆがみによって記述される。
3. 相対性理論は、超高エネルギー領域にいかない限りは正しい。
ということである。この3.がくせもので、我々が住んでいる宇宙のような
低エネルギー領域を考える分には相対性理論は正しいのだけれども、
例えば宇宙はエネルギーがめちゃくちゃ高い状態から始まったことが知られていて、
宇宙初期の物理を議論しようとすると、相対性理論では議論できないことになる。
そこで超ひも理論が必要になるわけなのだが、今日はこのへんで。
(※)これを既存の理論で説明しようとしたんじゃなくて、
原理に据えて新しい理論を生みだしたのが、アインシュタインの頭の柔らかさを
如実に表しているように思う。
(※※)超高エネルギー云々という話は、本当は後に物理学の発展によって
分かったこと。アインシュタインが発見したのは、時間微分の二階までしか
含まない式は(宇宙定数の自由度を除いて)これしかない、ということである。
(※※※)実は、この式を最初に見つけたのは数学者のヒルベルトである。
(※※※※)時空=時間と空間を合わせたもの。光速度を不変に保つ条件から、
空間と時間をある程度同じように扱わなければならないことが数学的に分かる。
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